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スノーボードデッキパッド 安定した成形に向けての金型設計

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今回は金型設計の一部についての説明です。  デッキパッドの形状は機能性を維持しながら軽量化と強度を兼ね備えた形になっています。 そのため複雑な形状になっており、安定して成形するには少々難易度が高くなっています。 金型設計時には射出成形を行った際に安定して成形できることを念頭にどのような金型構造にするか考えます。 1.成形時に材料が安定して充填できるか 2.成形後に反ってしまったり、部分的にヒケてしまわないか 3.金型から製品がスムーズに取り出せるか 上記のうち、2と3については製品設計や金型設計の段階でどのような形状が好ましいか話し合いながら形状を形成していきました。 少しの調整で改善するものもありますが、形状を思いっきり変えないと改善しない課題もあります。それが、1の「材料が安定して充填できるか」というところでした。 今回上の画像の矢印方向から樹脂を充填します。 材料は矢印方向の先に向かって流れていきます。 溶融した樹脂は、溶けているとはいえ、水のようにサラサラなものではなく、どちらかというと粘土のように変形はするけど固くて流れづらいイメージです。 流すというより押し込むという表現があっているかもしれません。 金型は金属を彫り込んで空間と作り、そこに成形材料を充填する仕組みです。 材料を充填する際は50~100MPaという高い圧力で充填するため、製品以外の部分に材料が流れないよう、製品以外の部分は密閉されている状態です。 そのためその空間の行き止まりになる個所、上画像の赤点線の部分は最後に材料が充填される部分であり、ここに空気が押し込まれて留まることが予測されました。 今度は製品ではなく金型の画像で説明です。 金型で赤点線の部分に空気がたまるので、どうにかして空気を逃がす仕組みを作る必要があります。 そこで今回は金型を紫部分だけ分割して製作し、「エアベント」を作ることにしました。 エアベントを施すことで、金型内に入ってくる樹脂と金型内に元々入っていた空気が無理なく置換出来て、先端まで材料を充填することができます。 エアベントなどの細工は製品の表面には出てきませんが、安定して成形するためには必要な細工になります。 このような細工はいわば裏方なので、製品ではわからないように施していきます。 今回はエアベントを例に出しましたが他にも製品が安定して成形できるような仕組みを

スノーボードデッキパッドの金型製作

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 スノーボードのシーズンまであと少しですね。 スノーボードデッキパッドってなかなか良いものが無くて、私はウレタンに両面テープを貼付けてスノーボードに貼付けていました。なかなかカッコ悪いですが、機能さえ満たせれば・・・と考えていました。 しかし、モンスタークリフさんからリフト間の移動でもしっかりホールドできるデッキパッドの製作依頼があり、今までにない画期的なデッキパッドだったため、開発段階から一緒にお手伝いさせていただきました。 モンスタークリフ さんのHP https://monster-cliff.jp/ 弊社は金型製作と射出成形を行う会社です。 普段は企業の研究、開発、試作部門と小ロットで成形品を製作しています。 量産時に起こる課題を抽出しながら製品形状の提案をすることが得意なため、デッキパッドの開発時には量産化しやすい形状を相談しながら金型製作を行いました。 金型製作から成形品を製作するまでのおおまかな工程としては 金型設計 金型部材の準備 加工プログラムの作成 工作機械を使った金型部品加工 手仕上げ調整 射出成形 になります。 金型設計のポイントは「量産時に滞りなく良品が生産できること」ですが、射出成形での潜在する課題を抽出し、あらかじめ対策を講じながら設計を進めていく必要があります。 3DCADでの金型設計 射出成形は金型を閉じた状態で金型内の空間部分に溶融させた樹脂を押し込み、冷やして固めてから金型を開いて成形品を取り出します。 そのため、金型設計時には 冷えて固まった時に縮まることを見越して大きさを調整 金型内にある空気と樹脂がスムーズに置換できるような構造 材料の流れ方を考慮したゲートランナ(材料注入口)の設定 を考えて設計します。 今回の製品は材料の流れが行き止まりになる部分があり、末端まで材料が流れにくくなることが予想されます。 そのため、空気が逃げやすくなるよう「エアベント」を設定します。 エアベントは深すぎるとそこに樹脂が流れ込んでしまうため、0.005~0.02mm程度で設定します。 他にも金型から成形品が離れやすくなるような形状や、適正な肉厚など製品形状を微調整し、お客様と相談しながら金型製作を行っていきます。 次回は金型設計のお話です。 杉山耕治