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4月, 2013の投稿を表示しています

金型の摺合せ

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私たちが作る金型には、複雑な形状が入り組んでおり、摺り合わせという作業が必要な形状もあります。 ここでの摺り合わせとは、金型が閉まる時に擦れ合う部分を調正せする作業の事をさします。   擦れ合う面積や距離が長い場合、さらに複雑である場合、何度も行われる金型開閉に耐えるためには、最後に調整をする必要が出てきます。 調整の方法として、金型の合わせを光明丹をつけて確認します。 摺り合わせて、当たりが強い部分は、黒くなります。 当たりの強い黒くなった部分を、やすりや砥石などで少しずつ減らして、調整していきます。 赤あたりを調整したら、今度は感触を確かめます。 組み込んだ時の「ざらっ」とした感じや、「くっ」と抵抗があるかを指先の感触で確かめます。 感触で確かめるのは大きさにも限度があり、小さいものほど難しくなります。 ただやみくもに探して調整するのではなく、機構上保持する部分と逃がせる(製品面に出なくて形状を保たなくても良い)部分を判断しながら少しずつ調整します。 この時、頭の中は「樹脂がどのように回ってくるか」とか「熱膨張すると動き渋くなるかな」とか「どちらの方から圧力がかかるかな」など、金型に組み込んだ状態で樹脂を充填したときのことを想像しながら作業をします。 頭の中で想像するには、多くの 失敗 経験が役に立ちます。 こうして摺り合わせた金型の部品(入れ駒)は最終的には何の抵抗もなく、スッと入るようにしてから金型に組み込みます。クリアランスは概ね5μmくらいになるでしょうか。 摺り合わせのような調整作業が無くせるように、前工程の切削加工や放電加工後を精度良く仕上げ、そのまま調整なしで金型を組みつけられるようにすることが最も効率の良い作り方と言えます。 私としては仕上げをしている時が、前工程の作業の改善を考えたり、金型を触りながらしっかり金型と向き合える時間なので、大切にしたい作業でもあります。 魂というか、念というか、思いを込める時間とも言えますね。 職人は見て覚えると言いますが、私は自社でこのような作業を教わったのではなく、他社のベテラン金型技術者に自分の考えを伝えてはダメだしされながら、色々な事を知るきっかけをもらってきました。 忙しいのに

【工場見学】鋳造 錦正工業株式会社

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4/16は栃木県那須塩原市にある 錦正工業株式会社 を見学してきました。 会社に着き、永森社長から座学で鋳造工程の説明を受けました。 いつの間にか鉄の組織の話から鉄の状態図の話題になり、フェライト、マンガン鉄、鋼の定義、炭素含有率による強度の変化などかなり深い話になっていきました。 状態図を使って、焼き入れや組織変形しないで残留応力を除去する温度域についてはわかりやすく説明して頂いたと思います。 鉄の溶解温度を下げるためには炭素を入れることが有効(入れすぎはもろくなる)という技術は、電気炉がない時代のたたら場では色々な試行錯誤で行われていたことと思います。 当時の苦労を想像すれば、今ある技術と調べればわかる環境にありがたさを感じました。 ダクタイル鋳鉄の組成に必要な物性など、今まで知らなかった内容も聞くことができ個人的には凄く楽しい座学となりました。 座学の後はいよいよ工場見学です。 まず、社員の皆さんがはっきりとした大きな声であいさつしてくれたのが印象的でした。 忙しい中、工場見学をさせて頂いて申し訳ないと思うところで、笑顔で挨拶してくれるとこちらも嬉しくなりますね。 鋳鉄の溶融工程や砂型のセッティング、中子の配置方法など分野の違う金型構造は大変勉強になりました。今まで資料などで目にしていた「中子」のセッティング方法、「押し湯」の役割と形状、「冷やし金」の役割など鋳造品を前にして説明して頂くことによりイメージがしっかり焼付きました。 配置や形状にはノウハウがありそうですが、役割が分かったことと使用後はどのようになるのかが理解できました。 百聞は一見にしかずとはこのような事を言うのでしょうね。 工場ではプーリの鋳造と、鋳造後の切削加工も行われていました。 錦正工業さんの商品であるプーリは、小ロットにも対応できるよう切削工程がうまく工夫されていました。 加工現場では不良品置き場があり、私は加工工程よりもそちらの方が気になりました。 不良品というものは人間の心理として、直ぐに消し去りたいものであり人目に付くところに置くのは敬遠しがちです。 しかし、失敗から目を背けてはなかなか成長はできません。 人目のつく通路わきに不良品BOXがあるのは、水平展開もでき非常に良い環境だと感じました。 作った

技術士2次試験 セミナーを開催しました

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4月6日に機械機械振興会館で技術士機械部有志による 技術士二次試験にチャレンジと題したセミナーを行いました。 当日は気象庁も「外出は控えてください」というように 開催前から悪天候が報じられ、遠方からは参加できない方もいらっしゃいました。 このセミナーは、技術士の試験制度があまりにも広範囲で、かつ難易度が高いため技術士を目指す人を応援する趣旨で開催されました。 戦車、自動車、ロボットのスペシャリストと私の4名が講演しました。 私は昨年に続き2回目の講師です。 私以外、講師3名のプレゼンは今回の企画ではなく、本業で聞いてみたくなるほど素晴らしく理論立てた内容でした。 個人的な考えですが 技術とは人を幸せにも不幸にもできる力だと考えています。 技術力のある人間が偏った倫理観や、私利私欲に物事を考え、培った技術を地球や人類の財産に損害を与えるようなことはあってはならないことだと思います。 技術力のある人間が適正な技術の使い方をし、社会から認められ、相応の地位を築き、人類や地球の発展のためになることが本来の技術の使い方だと考えています。 技術は私たちが生まれるはるか昔から先駆者たちが苦労しながら培ったものであり、私たちの役割は後世にきちんとバトンタッチすることだとも考えています。 正しい倫理観や、考え方は技術士となった今でもまだまだ不十分だと思います。 故に、技術士になった人には継続的な研鑽が義務付けられているのでしょう。 今回参加した人が技術士に合格して、技術士として社会の為にできることは何かを一緒に考える仲間が増えることを期待しています。 技術士試験は半年続きます。 どのようにモチベーションを維持しながら勉強するかが大切です。 (自分との闘いですね。) 新試験制度になって、手探りな部分はあるかと思いますが、合格目指して頑張ってください! 講演の内容は練習よりもかなりオーバーして帰って反省しました。。。

ミラノサローネまであと少し

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やっぱ曲線が凄い。 作っている側から見ても、こんな形状自分たちではモデリングしないよね。 ここ最近、そんな話をしながら作っているものがあります。 現在、 Triple Bottom Line の柳澤郷司氏の作品製作のお手伝いをしています。 最初の出会いは 渋谷ヒカリエ、Creative Lounge MOV aiiimaで行ったBRANCHと町工場展 でした。 その後、昨年末に開催されたエコプロダクツで講演されているときに再会し、いろいろお話を伺い環境に対する考え方が素晴らしいと感じたものでした。 環境に配慮したプロダクトについては同じ時間を共有しながら、色々と学ばせて頂いています。 柳澤さんが製作しているOLEDライトなどの作品は サローネサテリテ (2013年4月9日~14日までイタリアミラノで開催)で展示されます。 今日は各パーツの組み付け確認でした。 何とか組付けは出来たものの、一部改善点が出たのと、追加部品が必要になりました。 柳澤さんは会場設置のためにまもなく出発しなければなりません。 追加の製作物は、弊社の宮谷にハンドキャリーで持って行ってもらうことにしました。 寝袋持って。 後日、イタリアミラノから宮谷の更新があることでしょう(ニヤリッ お楽しみに。