第1回横浜金属加工研究会
9/26は横浜にあるメディアビジネスセンターで
横浜企業経営支援財団主催の金属加工研究会に参加してきた。
基本的には横浜の企業向けだと思われるのだが
他県に会社がある私も参加させて頂いている。
前プログラムは金型加工技術研究会と題して
放電、切削加工、金属造形、プレス加工など毎回わくわくしながらも
頭からもくもく煙が出るような内容の講義が企画されていた。
今回は
1.各種金型材料の耐食性について
2.高分子とその成形加工技術
についての講義だった。
震災の影響で実施できなかった金型加工技術研究会の分を
今回実施してくれる運びとなったのだ。
社内回覧用もかねてメモ書き程度にまとめてみた。
1.各種金型材料の耐食性について
腐食の二大反応はOとHの電子反応(カソード反応、アノード反応)
Evansの実験では
硫酸ナトリウム+フェノ-ルフタレイン+ヘキサシアノ鉄酸カリウム水溶液
の水滴を落とす事により、電子の移動により水滴の中心部ではアノード反応により青く
外周部ではカソード反応により赤紫の反応が見られる。
液の色で酸化と還元の初期反応が見られる。
インド、デリーのクツブミナール寺院の柱はウーツ鋼で作られ、
5世紀から存在している錆びない鉄として有名。
→不動態被膜の形成か?
不動態被膜とは金属の表面に(酸化)被膜を形成する事により
中の部材が酸化しない状態の事。
つまり、外部と丁度よく呼吸が出来ている状態。
不動態被膜が壊される環境は材料により異なるため、この不動態域でいられる
範囲が広いほど耐食性がある。(という風にとらえました)
水中では適度に酸素(空気)を供給する事により不動態被膜が生成し錆が発生しない。
では、ワイヤー放電加工機ではどうだろうか?
→不純物が多く不動態被膜を壊す事になる→被膜破壊イオン(塩化物や硫酸イオン)
→亜硝酸イオンの添加により腐食性イオンの除去が可能。
超硬合金の窒化物被膜は高温アルカリ水処理で可能。
TiALNはエンドミルのコーティングによく見られるが、高温、アルカリで除去が可能だと
水溶性切削油(弱アルカリ)で切削熱による影響をどのように見るかの質問も出た。
他には個体分子形燃料電池用ステンレルセパレータの開発についても
話していた。燃料電池用セパレータは最も注目すべき分野の一つ。
求められる機能としては、導電性、腐食しない、水素不透過、強度と寸法安定性、
量産性があり低コストなどがあげられる。
求められる環境下での腐食対策についての説明がされた
2.高分子とその成形加工技術
高分子材料とは、高分子量を有する有機、もしくは無機化合物の総称。
例えば、私達の周りにある買い物袋はポリエチレンなのだが
ポリエチレンはスパゲティのような長い分子が絡み合ってできた物。
絡み合ってる部分もあるが、ほどけやすい為伸ばす事が出来る。
ガラスなどは3次元網目構造でお互いにがっしりした構造。
ジャングルジムのような構造のイメージかな。
二酸化炭素は重量平均分子44[MW]で低分子。気体
でんぷんは150000[MW]で高分子。個体、水に溶かしても粘度が高い物質。
ポリエチレンの強度がグレードにより異なる理由
LDPE 鎖同士が効率的に近づけないので相互作用力が弱い
HDPE 相互作用力が非常に強い。密に詰まっている
LLDPE 分子間距離が適度に小さく、程良く相互作用し、絡み合いもある。
ポリマーの熱分析(DSC)により鎖の絡み合い運動を理解する。
試験体、PET では80℃付近で第一構造変化、220℃付近で第二構造変化が見られている。
熱分析中の偏光顕微鏡での経緯観察では100℃で主鎖が動き始め
200℃で再結晶化している様子が見られる。
微量だが170℃付近で熱量が上昇している様子が見れるため、この温度域で
非晶部での再結晶がおこっていると考えられる。
アニーリング処理と同じであり、結晶化度、強度、耐熱性の向上が見込まれる。
このように、高分子材料は温度により非晶部の結晶化をはかることにより
性能の向上につなげる事が出来る。
引張試験片で引張荷重をかけた状態でみられる、ネッキング部分では
分子が配向し強度が上がる。(延伸処理)
結晶化を考慮したポリプロピレンの射出成形条件と強度の関係は
試験材に衝撃を加え、経年変化を見るというものだが、非常に興味深い
結果だった。(東京都立産業技術研究所 清水 他 2002 より参照)
樹脂には種類により異なる融点があるのだが、成形時のシリンダー温度によって
成形品の物性が変わる。低すぎれば、結晶化が不十分で強度低下を招く事になり
高すぎればスクリュー内で分解してしまう。
ちなみに低い温度で成形した製品は、高温下で使用すると
再結晶化して大きさに変化(小さくなる)が出る事も考えられる。
最後はポリイミドについての紹介も。
今回は化学分野の内容になっており、話についていくのが精いっぱいだった。
金属加工も樹脂加工も化学的分野を知ることにより、見えないことが
見えてくるようになるのではないかと感じた講義だった。
次回の金属加工研究会は
『海外勢に勝つ企業とは?横浜のものづくり企業の戦略』
と題して
株式会社山之内製作、株式会社アルファーテックの2社の
講演が聞けます。
http://www.idec.or.jp/jigyou/j5.php4
興味のある方は是非。
横浜企業経営支援財団主催の金属加工研究会に参加してきた。
基本的には横浜の企業向けだと思われるのだが
他県に会社がある私も参加させて頂いている。
前プログラムは金型加工技術研究会と題して
放電、切削加工、金属造形、プレス加工など毎回わくわくしながらも
頭からもくもく煙が出るような内容の講義が企画されていた。
今回は
1.各種金型材料の耐食性について
2.高分子とその成形加工技術
についての講義だった。
震災の影響で実施できなかった金型加工技術研究会の分を
今回実施してくれる運びとなったのだ。
社内回覧用もかねてメモ書き程度にまとめてみた。
1.各種金型材料の耐食性について
腐食の二大反応はOとHの電子反応(カソード反応、アノード反応)
Evansの実験では
硫酸ナトリウム+フェノ-ルフタレイン+ヘキサシアノ鉄酸カリウム水溶液
の水滴を落とす事により、電子の移動により水滴の中心部ではアノード反応により青く
外周部ではカソード反応により赤紫の反応が見られる。
液の色で酸化と還元の初期反応が見られる。
インド、デリーのクツブミナール寺院の柱はウーツ鋼で作られ、
5世紀から存在している錆びない鉄として有名。
→不動態被膜の形成か?
不動態被膜とは金属の表面に(酸化)被膜を形成する事により
中の部材が酸化しない状態の事。
つまり、外部と丁度よく呼吸が出来ている状態。
不動態被膜が壊される環境は材料により異なるため、この不動態域でいられる
範囲が広いほど耐食性がある。(という風にとらえました)
水中では適度に酸素(空気)を供給する事により不動態被膜が生成し錆が発生しない。
では、ワイヤー放電加工機ではどうだろうか?
→不純物が多く不動態被膜を壊す事になる→被膜破壊イオン(塩化物や硫酸イオン)
→亜硝酸イオンの添加により腐食性イオンの除去が可能。
超硬合金の窒化物被膜は高温アルカリ水処理で可能。
TiALNはエンドミルのコーティングによく見られるが、高温、アルカリで除去が可能だと
水溶性切削油(弱アルカリ)で切削熱による影響をどのように見るかの質問も出た。
他には個体分子形燃料電池用ステンレルセパレータの開発についても
話していた。燃料電池用セパレータは最も注目すべき分野の一つ。
求められる機能としては、導電性、腐食しない、水素不透過、強度と寸法安定性、
量産性があり低コストなどがあげられる。
求められる環境下での腐食対策についての説明がされた
2.高分子とその成形加工技術
高分子材料とは、高分子量を有する有機、もしくは無機化合物の総称。
例えば、私達の周りにある買い物袋はポリエチレンなのだが
ポリエチレンはスパゲティのような長い分子が絡み合ってできた物。
絡み合ってる部分もあるが、ほどけやすい為伸ばす事が出来る。
ガラスなどは3次元網目構造でお互いにがっしりした構造。
ジャングルジムのような構造のイメージかな。
二酸化炭素は重量平均分子44[MW]で低分子。気体
でんぷんは150000[MW]で高分子。個体、水に溶かしても粘度が高い物質。
ポリエチレンの強度がグレードにより異なる理由
LDPE 鎖同士が効率的に近づけないので相互作用力が弱い
HDPE 相互作用力が非常に強い。密に詰まっている
LLDPE 分子間距離が適度に小さく、程良く相互作用し、絡み合いもある。
ポリマーの熱分析(DSC)により鎖の絡み合い運動を理解する。
試験体、PET では80℃付近で第一構造変化、220℃付近で第二構造変化が見られている。
熱分析中の偏光顕微鏡での経緯観察では100℃で主鎖が動き始め
200℃で再結晶化している様子が見られる。
微量だが170℃付近で熱量が上昇している様子が見れるため、この温度域で
非晶部での再結晶がおこっていると考えられる。
アニーリング処理と同じであり、結晶化度、強度、耐熱性の向上が見込まれる。
このように、高分子材料は温度により非晶部の結晶化をはかることにより
性能の向上につなげる事が出来る。
引張試験片で引張荷重をかけた状態でみられる、ネッキング部分では
分子が配向し強度が上がる。(延伸処理)
結晶化を考慮したポリプロピレンの射出成形条件と強度の関係は
試験材に衝撃を加え、経年変化を見るというものだが、非常に興味深い
結果だった。(東京都立産業技術研究所 清水 他 2002 より参照)
樹脂には種類により異なる融点があるのだが、成形時のシリンダー温度によって
成形品の物性が変わる。低すぎれば、結晶化が不十分で強度低下を招く事になり
高すぎればスクリュー内で分解してしまう。
ちなみに低い温度で成形した製品は、高温下で使用すると
再結晶化して大きさに変化(小さくなる)が出る事も考えられる。
最後はポリイミドについての紹介も。
今回は化学分野の内容になっており、話についていくのが精いっぱいだった。
金属加工も樹脂加工も化学的分野を知ることにより、見えないことが
見えてくるようになるのではないかと感じた講義だった。
次回の金属加工研究会は
『海外勢に勝つ企業とは?横浜のものづくり企業の戦略』
と題して
株式会社山之内製作、株式会社アルファーテックの2社の
講演が聞けます。
http://www.idec.or.jp/jigyou/j5.php4
興味のある方は是非。