Resiina金型製作

Resiinaの金型を製作するにあたりいくつか課題がありました

ゲート(材料注入口)をどこに設定するか

肉厚部分のヒケをどのように対処するか

裏側のデザインをどうするか

突き出しピンをどのように設定するか


Resiinaはチョコレート形状に模すため肉厚になっています。プラスチックの製品は肉厚だとヒケといって製品が凹んでしまう現象が発生します。今回使用する成形材料ABSだとおおむね2mmくらいの肉厚が丁度よく、4mmを超えるとヒケが目立ちやすくなります。そのため①~③は全て連動して検討する必要がありました。


最初に製作した金型は裏面がシボ加工サンプルになっていました。

シボ目を見てどのくらいの粗さにするかを確認できるツールがRやCのサンプルと一体になっていたら便利だと考えたからです。


裏面にシボ加工を施したResiina

しかし、このデザインは断念することになりました。

最大の理由は製品のヒケです。


Resiinaは肉厚で製品の裏面にもヒケが発生していました。そのため、裏面に施したシボサンプルが平面にはならず歪んで見えてしまいまいました。数値にすれば数μmのゆがみです。しかし、人間の目は非常に繊細でほんの少しのゆがみも認識できてしまいゆがんでいないものと比べるとかなり印象が変わってしまいます。




実際に製作したシボサンプルの形状、シボの粗さが粗いほどヒケは見えづらくなりますが、浅いシボ(写真下側)はぼんやり模様が見えます。

折角のサンプルなのに、間違った情報を与えてしまうと本末転倒です。


そのあとはヘアラインのサンプル金型も製作しましたがそちらもシボサンプルと同様の理由で採用されませんでした。

裏面の金型部分へライン加工前

1区画ずつへラインの番手ごとに手加工

結果的に色々な情報を入れるよりもRやCのサンプルとして1つの情報を丁寧に作りこもうという事になり裏面にはメッセージを彫り込むことにしました。


・シボ加工をした金型

・へライン加工をした金型

2金型とも世に出ることはありませんでした。


余談ですが、金型は製品と逆の形状で製作します。

そのため文字は逆文字になります。うっかり正文字で金型製作するとやり直すことにもなるので念のため金型加工し終わった際に文字のバランスやキチン度彫り込まれているかの確認も含め粘土で押し当ててチェックしたりします。


ヒケの対処には、成形時に金型内に樹脂を充填する圧力を強くする必要があります。

成形圧力を製品内部に伝えるためには、なるべく太いゲートが必要になります。

しかし、太いゲートは製品の外観を大きく損ねるためデザイン的に受け入れづらく何とか対処できないかを話し合いました。


太いゲートのためニッパーでカットしただけだと目立つ

ゲートの部分は「ゲートだとわからないように処理してしまおう」ことにしました。

処理をするという事は成形後も手間がかかります。


「捨てられないものを作る」という目的があるため、手間はかかるがユーザーが後々まで大切にしてもらえることを選択しました。


ゲートの部分はニッパーでカットしその後切削加工で側面に合わせます。




その後ゲート部分に四角い枠を削りミヨシのロゴマークを入れています。




製作初期は彫刻機を使用して手加工をしていました。


今は彫刻機を使用できる人いなくなったためマシニング加工で1つずつ加工をしています。



最後にもう一つの課題、突き出しピンの設定がありました。

プラスチック製品の裏面に丸や四角の跡があるのを見たことがありますか?

マウスの電池蓋裏側

この丸や四角の跡は製品を押し出すときについた突き出しピンの跡です。


プラスチックを金型から外す際、手でも外せるのではないかと思われるかもしれませんが、成形品は金型にしっかりとくっついてしまい人の力では取り出すことが困難です。


射出成形は樹脂が解けた状態で金型に充填され、冷えて固まる際に収縮します。

この収縮という現象で金型内の凸形状になっている部分に樹脂が抱き着いて成形品が金型から簡単には抜けなくなってしまいます。


射出成形品は金型の中から取り出すために、何らかの機構で押し出す必要があり、押した部分に跡が残ります。


この突き出しピンの跡を目立たなくするためにどうすればよいかをみんなで考えました。


Resiinaはどうやってこの問題に対処したのでしょうか。


答えは・・・


Resiinaの突き出し」につづく


このブログの人気の投稿

銅ハンマー

金型の摺合せ

マイクロメータ収納ボックス