2013年4月23日火曜日

金型の摺合せ

私たちが作る金型には、複雑な形状が入り組んでおり、摺り合わせという作業が必要な形状もあります。
ここでの摺り合わせとは、金型が閉まる時に擦れ合う部分を調正せする作業の事をさします。
 
擦れ合う面積や距離が長い場合、さらに複雑である場合、何度も行われる金型開閉に耐えるためには、最後に調整をする必要が出てきます。




調整の方法として、金型の合わせを光明丹をつけて確認します。

摺り合わせて、当たりが強い部分は、黒くなります。
当たりの強い黒くなった部分を、やすりや砥石などで少しずつ減らして、調整していきます。

赤あたりを調整したら、今度は感触を確かめます。
組み込んだ時の「ざらっ」とした感じや、「くっ」と抵抗があるかを指先の感触で確かめます。
感触で確かめるのは大きさにも限度があり、小さいものほど難しくなります。

ただやみくもに探して調整するのではなく、機構上保持する部分と逃がせる(製品面に出なくて形状を保たなくても良い)部分を判断しながら少しずつ調整します。

この時、頭の中は「樹脂がどのように回ってくるか」とか「熱膨張すると動き渋くなるかな」とか「どちらの方から圧力がかかるかな」など、金型に組み込んだ状態で樹脂を充填したときのことを想像しながら作業をします。


頭の中で想像するには、多くの失敗経験が役に立ちます。




















こうして摺り合わせた金型の部品(入れ駒)は最終的には何の抵抗もなく、スッと入るようにしてから金型に組み込みます。クリアランスは概ね5μmくらいになるでしょうか。

摺り合わせのような調整作業が無くせるように、前工程の切削加工や放電加工後を精度良く仕上げ、そのまま調整なしで金型を組みつけられるようにすることが最も効率の良い作り方と言えます。






私としては仕上げをしている時が、前工程の作業の改善を考えたり、金型を触りながらしっかり金型と向き合える時間なので、大切にしたい作業でもあります。
魂というか、念というか、思いを込める時間とも言えますね。

職人は見て覚えると言いますが、私は自社でこのような作業を教わったのではなく、他社のベテラン金型技術者に自分の考えを伝えてはダメだしされながら、色々な事を知るきっかけをもらってきました。
忙しいのに「お前、こんなんじゃだめだ」と言いながらもヒントというか勘所を教えてくれた技術者の方には今でも感謝しています。

摺り合わせは最後の仕上げになります。金型は「ここだけ抑えればよい」という加工はなく、すべての作業において真剣に取り組むことが求められます。
ものづくりを真剣にやれば必ずきちんとした形で自分に返ってくるものだと私は信じています。