技術士登録と代表交代

前回のお話し リーマンショックと営業活動


2008年以降仕事は激減し毎年売り上げが減っていき、2010年の売り上げは2007年の売り上げに比べて1/3まで減少しました。

その間、人員整理などはせずに人件費や光熱費などの固定費が同じ状態だったため、収入に対して支出が大幅に上回り、固定費の支払いのために運転資金で多額の借入をするようになります。

不況の最中でしたが私は専務取締役に就任しました。資金繰りが厳しい状態でしたが社員のお給料を支払う方が優先であり役員報酬が0になることもありました。当時は働いても報酬がなく非常に苦しい状況でした。


当時の社長だった父はキャッシュが無くならないよう金融機関と交渉し借り入れを続けて会社は存続できました。しかし、売上げや利益の改善は見られず、経営状況があと1年このままだと会社は倒産するところまで状況が悪化していきました。当時、社長だった父には、たとえ会社が倒産しても二人でやり直そうと話したこともありました。会社が倒産する可能性を受け入れ覚悟が決まった時期でした。その頃から会社が倒産する可能性があるなら、やれることをやらずに後悔したくないと考え、積極的に色々なことに挑戦していきました。

先行きも不透明で好転する材料がなく、さらに借入が増えていく状況であれば、早い段階で代表交代した方が良いと考え、2010年に父と話し合い、2012年に代表交代をすることにしました。

2010年から2012年の代表交代するまでの期間はとても大変でした。

親子といえども違う人間であり、考え方が異なるので主張の食い違いは様々なところでありました。それまでは意見が合わない場合は極力自分の主張は抑えていましたが、会社を承継するとなると自分の人生にも大きな関わりがあります。自分が会社を継いだ後を考え、会社をどのような方向性にするか意見を言うようになっていきました。創業者で長年会社経営をし様々な困難を乗り越え会社を存続させてきた父にとって、経営のことに意見を言われるのは気持ちの良いものではなかったと思います。
お互いが会社を存続させ発展させていきたいという想いも重なり、考え方の違いから衝突は大きくなっていきました。当時は社内の雰囲気は非常に悪くその時居合わせた社員には申し訳ないと思っています。


代表交代を申し出た当時はまだ30代前半だったため、自分自身が経営者としてはもちろん、技術者としても会社の代表となって社会から信頼してもらえるのか不安でした。


私たちの仕事は技術で社会の役に立つものを作るため、様々なことに対応できるよう高い技術力が必要だと考えました。さらに、課題解決や問題に向き合い対応し、お客様に寄り添ったものづくるをするためにも、専門分野の技術的知見が必要でした。
そこで挑戦したのが技術士試験でした。
代表交代をしてからでは技術士試験に向き合う時間は限られると考え、2011年に技術士二次試験を受験しました。8月に筆記試験、筆記試験の合格通知後に論文を提出して12月に口頭試験を受験し、翌年2012年3月に技術士合格通知が届き技術士登録をしました

技術士の説明「日本技術士会HPより」

技術士とは


技術士を取得して良かったと感じていることの一つに継続研鑽(資質向上の責務)があります。技術士は名称独占資格であり、弁護士などのような業務独占資格と異なり資格を取ったから特定の仕事ができるようになるわけではありません。自分自身で研鑽を重ね社会に貢献する活動を探して行かなければなりません。試験も難しいですが合格した後もゴールが見えない資格です。つまり、自己研鑽を重ね自分で社会的に価値の高い活動を探して、行動しなければなりません。

そういう意味では、技術で社会の役に立つ事業を行う技術系企業の経営者とは相性が良い資格だと感じています。


技術士取得を経て、入社して9年目、父が65歳、私が35歳で会社設立30年の節目である2012年に私は株式会社ミヨシの代表取締役に就任しました。


代表交代して初めに行った仕事は銀行での代表交代手続きと会社の借入金の経営者(個人)保証でした。覚悟はしていたものの今まで経験をしたことがない借入金の個人保証は精神的な負担が大きかったと思います。


代表交代した後も会社経営、技術、営業、人事など先代だけでなく、様々な先輩経営者に色々なことを教わり、少しずつ知見を広めていきました。


そして、会社の方向性を定めたく、これからの社会にとって普遍的に必要なことで自分のやりたいことを企業理念に掲げようと考え「人の役に立つものづくり」「捨てられないものづくり」を企業理念として事業活動をしています。

2022年の12月で代表交代して10年が経過します。

今でも企業理念は変わることなくこの先も継続して、ものづくり企業として未来の地球上の人類から評価されるような活動をしていきます。

そのためにも、社会から評価される事業活動ができるよう、会社の組織や仕組みづくり、社員が成長できる環境を整えていきたいと考えています。


杉山耕治